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「漆原の物理」とは?シリーズ概要をおさえよう
「漆原晃の物理が面白いほどわかる本」は、KADOKAWA(中経出版)から発行されている大学受験用の物理参考書シリーズです。物理を苦手とする受験生から難関大志望者まで幅広く支持されており、「物理の独学といえば漆原」と言われるほど定評があります。
シリーズは以下の3冊で構成されており、物理の全範囲を網羅しています。
| 冊 | 扱う分野 | 主な内容 |
|---|---|---|
| ①力学・熱力学編 | 力学・熱力学 | 運動方程式・エネルギー・気体の状態変化など |
| ②電磁気編 | 電磁気 | 電場・回路・電磁誘導・コンデンサーなど |
| ③波動・原子編 | 波動・原子 | 波の性質・音・光・原子核など |
私がこれまで家庭教師として指導してきた受験生の中でも、「漆原でようやく物理が理解できた」という声を何人も聞いてきました。それほど説明の質が高いシリーズです。

漆原の物理の最大の特徴「漆原メソッド」とは
この参考書が他と一線を画すのが、著者・漆原晃氏が考案した「漆原メソッド」と呼ばれる解法体系です。
物理の問題を解く際に、「何を考え、どの順番で処理すればよいか」を明確なステップに落とし込んでいます。たとえば力学では「物体に働く力をすべて図示する→合力を求める→運動方程式を立てる」という流れを徹底的に体に染み込ませることで、初見の問題でも対応できる力をつけられます。
公式の丸暗記ではなく、「物理現象を正しくイメージする→定石の手順で処理する」という思考プロセスを訓練することが、このシリーズの核心です。

3冊の詳細と特徴
①力学・熱力学編
物理の土台となる力学を徹底的に扱います。力のつり合い、運動方程式、エネルギー保存、運動量保存といった頻出テーマが丁寧に解説されており、「力の図示(力のベクトル矢印)」を繰り返し描かせることで、正確な物体の状態把握を習慣化させます。
熱力学については、気体の状態方程式やp-Vグラフの読み取り方など、受験生が苦手としやすいテーマも視覚的に整理されています。
②電磁気編
受験生が最も苦手とする分野のひとつが電磁気です。この冊ではキルヒホッフの法則、コンデンサーの充放電、電磁誘導のファラデーの法則など、複雑な概念が「電気回路のイメージ図」をふんだんに使いながら解説されています。
「電場と電位の違いがわからない」「コンデンサーが絶対に解けない」という受験生こそ、②から始めるのではなく、①で解法の型を身につけてから②に進むことをすすめます。
③波動・原子編
波動は「波のイメージを持てるか否か」で理解度が大きく変わります。この冊では波の重ね合わせ・定常波・ドップラー効果・光の干渉といった視覚的に難しいテーマを、図解を多用して丁寧に解説しています。
原子分野は多くの参考書で手薄になりがちですが、このシリーズでは核反応・光電効果・コンプトン効果まで入試頻出テーマを網羅しており、手を抜いていないのが好印象です。

メリット・デメリット
メリット
- 解法の「型」が明確:「何をどの順番で考えるか」が体系化されており、初見の問題でも手が動くようになる
- 図解が豊富で直感的:物理現象を視覚的にイメージしやすく、文章だけでは伝わりにくいことが図で補完されている
- 独学に最適:講義形式の語り口で書かれており、授業を受けているような感覚で読み進められる
- 入試レベルまで対応:基礎から入試問題の演習まで段階的に取り組めるため、1冊の使用期間が長い
- 3冊で全範囲をカバー:力学から原子まで抜け漏れなく学べる

デメリット
- 問題数は多くない:解説中心の参考書のため、演習量を確保するには別途問題集が必要
- 最難関レベルには不十分:東大・京大・東工大など最難関校の物理には、このシリーズに加えてより難易度の高い問題集が必要になる
- 読むだけになりやすい:語り口が読みやすいぶん、「読んで理解した気になる」罠にはまりやすい。必ず手を動かして解くことが重要

他の物理参考書との比較
| 参考書 | 難易度 | 解説の丁寧さ | 問題数 | 独学向き | 対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| 漆原の物理(本シリーズ) | 基礎〜標準 | ★★★★★ | 少なめ | ◎ | 苦手〜標準 |
| 物理のエッセンス | 基礎〜標準 | ★★★☆☆ | 多め | △ | 標準〜難関 |
| 宇宙一わかりやすい物理 | 基礎 | ★★★★☆ | 少なめ | ◎ | 初学者 |
| 良問の風 | 標準 | ★★★☆☆ | 多め | △ | 標準〜難関 |
| 名問の森 | 難関 | ★★☆☆☆ | 多め | × | 難関〜最難関 |
漆原の物理は「解説の丁寧さ」と「独学向き」の観点では群を抜いています。問題演習は別途「良問の風」などと組み合わせるのが定番ルートです。

東大卒が推奨する使い方・勉強ステップ
ステップ1:まず「読む」→図を自分で描く
最初は解説をじっくり読み、図を自分のノートに模写します。物理は「正しいイメージを持てるか」が勝負なので、図を描く習慣が非常に重要です。
ステップ2:例題を「解法の型」に沿って解く
解説を読んだら、例題を参考書を閉じて自力で解いてみます。「漆原メソッド」の手順をなぞりながら、毎回同じ順番で思考を整理する練習をします。
ステップ3:できなかった問題に印をつけて繰り返す
1周目で解けなかった問題には印をつけておき、2周目以降は印のついた問題だけを集中的に復習します。3周が目安です。
ステップ4:問題集に移行する
3冊を一通り終えたら、演習用の問題集(良問の風など)に移行します。そこで解けない問題が出たら、漆原の対応ページに戻って解法を確認するという往復の使い方が効果的です。
おすすめの学習順序と時期
| 時期 | やること |
|---|---|
| 高2〜高3の4月 | ①力学・熱力学編を読み始める |
| 高3の6〜7月 | ②電磁気編・③波動原子編を終える |
| 高3の夏以降 | 演習問題集(良問の風など)へ移行 |
| 高3の秋以降 | 過去問演習・弱点単元の漆原復習 |
3冊をすべて終えるのに、1日1〜2時間のペースで進めると約3〜4ヶ月が目安です。受験学年なら遅くとも夏前には読み終えたいところです。

よくある失敗パターン
失敗①「読むだけで演習しない」
漆原の物理は語り口が非常に読みやすいため、「読んで理解した」だけで満足してしまう受験生が多いです。理解と解答できることは別物です。必ずページを閉じて自力で解く時間を設けてください。
失敗②「3冊を順番に最初から丁寧にやりすぎる」
①を完璧にしてから②へ、という進め方だと時間がかかりすぎます。1冊を「完璧に」ではなく「一通り」読み進めることを優先し、復習で精度を上げていくサイクルが効率的です。
失敗③「問題集に移行しない」
漆原だけで受験に臨もうとする受験生がいますが、問題演習は必須です。解説参考書と問題集は車の両輪と考えてください。

FAQs:よくある質問
Q1. 物理が完全に初学者でも使えますか?
使えますが、最初は「宇宙一わかりやすい物理」などでごく基本的な概念(力・速度・加速度の意味など)をおさえてから漆原に移る方がスムーズです。物理の学習経験が全くない場合、漆原の1冊目から読み始めると序盤でつまずくことがあります。
Q2. 3冊すべて買う必要がありますか?
志望校の出題範囲によります。私立理系で電磁気が頻出なら②を優先、共通テストのみなら①と③の波動部分だけでも対応できます。ただし、効率の観点からは3冊すべて取り組むことをすすめます。
Q3. 漆原の物理と「物理のエッセンス」はどちらが先ですか?
物理が苦手なら漆原が先です。エッセンスは解説が簡潔なぶん、ある程度の素地がないとかえってわかりにくくなります。漆原で解法の型と物理的イメージを作ってからエッセンスや問題集に移るのが王道ルートです。
Q4. 漆原の物理だけで偏差値はどこまで上がりますか?
このシリーズをしっかり3冊やりこめば、偏差値55〜60程度まで到達できると考えてください。それ以上(難関国立・早慶理工)を目指すには、演習問題集との組み合わせが必要になります。
Q5. 改訂版と旧版の違いは何ですか?
改訂版は新学習指導要領(2022年度以降)に対応しており、原子分野の内容が充実しています。現在受験を控えている方は必ず「改訂版」を購入してください。旧版は指導要領が異なるため、入試範囲と一致しない可能性があります。
Q6. 電磁気が特に苦手です。②から始めてもいいですか?
おすすめしません。電磁気の問題を解く際にも、力学で習得した「物体に働く力の分析」「エネルギーの考え方」が基盤になります。まず①で解法の思考プロセスを身につけてから②に進む方が、結果的に電磁気の理解も深まります。

まとめ
漆原晃の物理シリーズは、物理が苦手な受験生が「正しいイメージと解法の型」を身につけるのに最適な参考書です。丁寧な図解と漆原メソッドによって、「なんとなく解く」から「根拠を持って解く」への転換が起こります。
ただし、解説参考書である以上、演習問題集との併用は必須です。3冊を読み込んだうえで問題集に移行し、解けなければ漆原に戻るという往復の学習が最も効率的です。
物理を武器にしたい受験生はもちろん、「物理だけがどうしても伸びない」という受験生にこそ、手に取ってほしいシリーズです。
本記事は東大卒・家庭教師経験者による監修のもと作成しています。