古文読解のコツ
主語補完と敬語で読み解くテクニック
主語補完と敬語で読み解くテクニック
古文が「なんとなく」しか読めない中級者に向けて、主語の補い方と敬語の見分け方を体系的に解説します。
古文読解で伸び悩む人の多くは、単語や文法は覚えているのに文章全体の流れが追えないという状態です。その根本にあるのが「主語の省略」と「敬語による人物特定」の2つのつまずきです。この記事ではその2点に絞って解説します。
Contents
なぜ古文は「わかっているのに読めない」のか
単語も文法も学んだのに模試で点が取れない——そう感じているなら、問題は暗記量ではなく読み方の手順にあります。現代文と違い、古文には読解を難しくする2つの構造的な特徴があります。
主語の大量省略
古文は同一人物の動作が続く場合、主語を徹底的に省きます。1段落に主語が1度も書かれないことも珍しくありません。
敬語で人物を示す
主語が書かれていない代わりに、敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)がその動作の主体・客体を示す手がかりになっています。
文脈の積み重ね
前の文で誰が何をしたかを正確に把握していないと、後続の省略主語が一切補えません。読み間違いが雪だるま式に拡大します。
この3つが絡み合うため、「1文ずつは理解できても話の流れが追えない」という状態が生まれます。解決策は読み方に明確な手順を持つことです。
古文の主語補完|省略された主語を読み解く方法
主語省略の古文を読むには、「どこで主語が変わるか」を察知するセンサーを鍛えることが先決です。そのための具体的な手順があります。
主語が変わるサインを知る
古文には主語の交代を示すパターンが存在します。以下の3つは必ず頭に入れてください。
1
接続助詞「ば・に・を」のあとは主語が変わりやすい
「〜ば」「〜に」「〜を」で文が区切れるとき、後ろの主語は前の主語と異なることが多いです。特に「ば(已然形+ば)」は要注意。
2
「て・して・つつ」は主語が変わりにくい
「〜て」で続く動作は同じ人物が行うことがほとんど。連続した行動の描写と判断できます。
3
会話文の直後は話し手が主語になる
「と言ふ」「とのたまふ」の直前のカギ括弧内は、その直前の人物が話しています。会話の前後で主語が整理されます。
実例で確認する
例文:主語補完の練習
大臣、御前に参り給ひて、姫君の御事を申し上げ給ふに、帝いみじく御覧じて、やがて召し入れさせ給ひければ
主語①「大臣」が参上し、申し上げている(「給ふ」は尊敬→主語は大臣)
変化点接続助詞「に」→ここで主語が交代するサイン
主語②「帝」がご覧になり、召し入れた(「御覧じ」は帝への尊敬表現)
この例では「に」を境に大臣→帝と主語が切り替わっています。接続助詞をマーカーとして意識するだけで、主語の読み間違いが大幅に減ります。
主語補完チェックリスト
文章に登場人物を番号や記号でメモする(「大臣=A」など)
接続助詞「に・を・ば」に毎回マーカーを引く
動詞に付いている敬語を確認し、主語の格(身分)と照合する
主語が変わった場合、括弧書きで「(帝)」と書き込む習慣をつける
古文の敬語見分け方|尊敬・謙譲・丁寧の使い分け
古文の敬語は現代語と仕組みが異なります。誰から誰への敬意かを意識しないと、敬語を知っていても主語特定に使えません。まず3種類を整理します。
| 種類 | 方向 | 意味の核心 | 代表語例 |
|---|---|---|---|
| 尊敬語 | 動作主を敬う | 「〜なさる」にあたる。動作をしているのが身分の高い人 | 給ふ・おはす・のたまふ・御覧ず |
| 謙譲語 | 動作の向かう相手を敬う | 「〜申し上げる」。動作をするのは話者・低い人物 | 奉る・申す・参る・候ふ(謙) |
| 丁寧語 | 聞き手を敬う | 文章・会話の聞き手への配慮。主語特定には直接使わない | 侍り・候ふ(丁寧) |
敬語で主語を特定する手順
動詞を見つける
→
敬語かどうか判断
→
尊敬語なら
主語は高貴な人物
主語は高貴な人物
→
謙譲語なら
客体が高貴な人物
客体が高貴な人物
→
主語・客体を確定
二重敬語(最高敬語)への対応
中級者がつまずくのが「給ひ奉る」「せ給ふ」のような二重敬語です。2つの敬語表現が組み合わさっている場合、動作主は最も身分が高い人物(帝・院など)であることを示します。二重敬語を見つけたら「この動作の主語は帝クラス」と即断できます。
例文:敬語による主語特定
中将、御前にて御琴を弾き奉り給ひけるに、帝いみじうめでさせ給ひて
謙譲「奉り」弾く行為が帝(客体)への敬意→演奏しているのは中将
尊敬「給ひ」二重敬語で動作主は帝クラスに確定
「させ給ひ」尊敬の複合→帝が主語。「めで」は感心する意
主語補完と敬語を組み合わせた読解フロー
2つのテクニックを実際の読解でどう使うか、手順をまとめます。試験本番でもこの順序で考えることで、主語の読み間違いが激減します。
1
登場人物と身分を把握する(冒頭必須)
文章の最初に出てくる人物名と身分(帝・大臣・女房など)をメモする。敬語レベルの高低が後の判断の基準になります。
2
接続助詞でブロック分けする
「ば・に・を」で文を切り、主語交代の可能性がある境界線に印をつける。
3
動詞の敬語を確認して主語候補を絞る
尊敬語なら主語は高い身分の人物、謙譲語なら客体が高い人物。複数の候補が残ったら文脈で判断。
4
前後の文脈で答え合わせする
決定した主語で文を読み直して話が通じるか確認。通じなければ再度敬語を見直す。
練習のポイント|中級者が伸びるための具体的な訓練法
3
読解前の準備
登場人物のメモ・身分確認・接続助詞への印つけ。準備に使う2分が読解精度を大きく変えます。
×2
音読の効果
主語を意識しながら声に出して読むと、「誰の動作か」の意識が自然に養われます。黙読だけでは気づけないズレが露わになります。
1冊
音訳ノートの作成
間違えた主語の読み違いをノートにまとめ、どの敬語を見落としたかを記録。パターンが見えてきます。
中級者にありがちな落とし穴は、単語・文法の復習に戻り続けることです。主語補完と敬語の習得は「知識の増量」ではなく「読む手順の習慣化」です。毎日1題、上記の手順を意識しながら文章を読む練習を2週間続けると、模試での正答率に変化が出てきます。
おすすめの練習素材(難易度順)
源氏物語・桐壺巻——敬語が豊富で主語交代が明確。初めての精読に最適
大鏡——会話が多く、登場人物が整理しやすい。歴史的背景の予習が効果的
センター試験(共通テスト)過去問——難易度・形式のバランスが最も良い実践素材
よくある質問
「給ふ」は尊敬と謙譲で形が同じでは?どう見分けますか
▼
「給ふ」は四段活用(給は・給ひ・給ふ・給ふ・給へ・給へ)なら尊敬語、下二段活用(給へ・給へ・給ふ・給ふる・給ふれ・給へよ)なら謙譲語です。接続する語の活用形を確認するのが確実な見分け方です。四段の「給ふ」が圧倒的に多いため、まず尊敬と判断し、文脈で違和感があれば謙譲の可能性を疑う順序が実用的です。
主語の交代ルール(「ば」で変わる)は絶対ですか
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絶対ではありません。「ば」で主語が変わらない例も存在します。ただしこのルールは「主語が変わる可能性が高い箇所」を見つけるためのヒントとして使うものです。最終判断は敬語と文脈で行います。「ば→主語変化を疑う→敬語で確認→文脈で検証」という順序を守ることが大切です。
敬語が少ない文章(随筆・日記など)ではどう読めばいいですか
▼
枕草子・土佐日記などの日記・随筆は作者視点が中心のため、主語は「書き手本人」であることが多いです。登場する他者には敬語が付くことが多いので、敬語の有無で「書き手」か「書き手以外」かを区別できます。また日記文学は時系列に沿うため、文脈による主語の推測がしやすいジャンルです。
古文の読解で時間が足りなくなります。速く読むコツはありますか
▼
読解スピードを上げるには「主語の確認コスト」を下げることが先決です。上述の手順が自動化されると、一文ごとに立ち止まらず読み進められるようになります。また、共通テストなど選択式の問題では「問いが何を聞いているか」を先に確認してから本文を読む「設問先読み」が有効です。読む範囲を絞れるため、時間を大幅に節約できます。